Laboratories 最先端材料を総合的に学び研究する研究室

HOME > 研究室 > 研究室_04

環境半導体工学

no image

教授:飯田 努
助教:平山 尚美

環境問題・エネルギー問題解決の材料開発

私たちの研究室では,地球温暖化を改善するためのエネルギー変換材料の開発を行っています。半導体の中には太陽電池に代表されるようなエネルギー変換を行うものがあり,現在大きく発展しつつあるのが,熱―電気変換素子による排熱発電です。ボイラーや焼却施設,自動車のエンジンなど,そのエネルギー変換効率は高くなく,大半(~70%以上)が排熱として系の外部へ失われています。エネルギー消費の最終的な形態である熱エネルギーを電気エネルギーとして再利用する排熱発電を実現する「環境低負荷型半導体」熱電変換材料の開発を行っています。

研究説明図LinkIcon
関連情報はこちら


c2x2-toumei.gif

研究例

環境低負荷型半導体・マグネシウム・シリサイド(Mg2Si)原料開発

様々なエネルギー熱電変換材料を探索する中で、私達はマグネシウム・シリサイド(Mg2Si)という材料に照準を定めました。マグネシウムもシリコンも地核中に豊富に埋蔵していますので、エネルギー変換材料として用いても原料の枯渇問題はありません。また、中国や一部の国々に偏在するレアアース等の稀少金属ではなく、世界的に広く分布し、入手しやすい原料から構成されるいわゆる環境低負荷半導体とよばれる材料です。
 半導体材料の世界では、従来は性能さえでれば、アンチモン(Sb)、砒素(As)、セレン(Se)、テルル(Te)、カドミウム(Cd)など毒性のある物質を使うことがある程度社会的に許容されていました。
 Mg2Siの合成研究では、我々は、自然にちかい熱平衡状態で材料を合成したいという思いから、溶かしてゆっくりと固めるという基本に戻った合成法をベースとなる母材料の作製に採用しています。基本に戻った合成法が材料的に安定な環境を与え、かつ環境負荷を低減できる思うからです。現在は高い熱電変換能力と高温耐久性を有するMg2Siの合成を行っています

Mg2Si

廃棄物Siを原料にして排熱発電材料を合成

Si半導体では、太陽電池用には99.99999%(7N)程度、LSIデバイス用途には99.999999999%(11N)程度の高純度Si原料が要求されますが、熱電変換用材料であるシリサイド系材料では特定の悪影響を与える不純物が混入しなければ、太陽電池用やLSI用Si原料よりも低純度のものが使用できると考えられます。高純度Si原料は需要の急速な伸びに慢性的な品不足の一方、LSIチップやパワートランジスタ・シリコン太陽電池等の素子への加工工程において、インゴットの切断、バックグラインド、ダイシング等により、およそ70%はスラッジとして使われずに無駄に廃棄されています。Si素材の製造では、1 kgのSiウエハーを得るのに一般的には1000 kWhの電気エネルギーが必要とされ大量のエネルギーを消費しているにもかかわらず半導体産業全体で廃棄されている廃シリコンスラッジの総量は膨大で、埋立て処理やCO2排出等の環境負荷が近年大きなものとなってきており、大量の廃棄物Siスラッジを有効活用して環境負荷を低減する取組が行われています。その一つとして廃棄物Siスラッジを純化処理したリユースSiケーキを、シリサイド系熱電変換材料のSi原料に用いMg2Siの原料開発を行っています。
 LSIや太陽電池などの製造では、Siウエハー、Siインゴットを研削,研磨する際に、粒度が0.1 ~10μmの非常に細かい廃シリコンスラッジが水とともに排出されます。この廃シリコンスラッジ排水には不純物元素(例えばB、P、As、Sb等)に加え、研削、研磨工程で混入するW、Cr、Ti、Ga、Fe、O等が多く含まれていますが、これらリユースSi特有の不純物は現在のところ最大でも〜1018cm-3を大きく超えないことから、Si原料価格の高騰と膨大な環境負荷物Siスラッジの処理問題と相まって、Mg2Siの原料素材として実験室レベルでは良好な熱電変換特性が得られます

廃棄物Si

自動車や工場排熱を再資源化する発電モジュール開発

熱電デバイスでは、高温部と低温部の温度差があると、ゼーベック効果により熱が電気に変換されます。ゼーベック効果というのは、物体の温度差が直接電圧に変換される現象で、1821年に物理学者トーマス・ゼーベックによって発見されたことから、彼にちなんでゼーベック効果と呼ばれています。高効率エネルギー利用においては、エネルギーの最終形態である「排熱」をいかに有効利用するかが重要です。自動車や工場から排出される排熱エネルギーを現代社会で最も使いやすい電気エネルギーに直接変換する熱電変換半導体デバイスは将来的に重要です。例えば、自動車において最初に投入したガソリンを100とすると、走行に使用されている燃料の割合はおよそ16%しかなく、70%程度が熱として排出されています。この未利用熱を電気エネルギーとして十分に再利用できれば、現在エンジンに接続されている補器類(パワステ、冷却水ポンプ、エアコン等)を電動化でき、発電機を小型化、あるいは排除することにつなげられ、それら機器で消費される燃料分を削減できるようになります。そのような利用法が早く実現されるように研究開発を行っています。

発電モジュール

c2x2-toumei.gif